昨日の敵は今日の客


ぴーんぽーん

と、マヌケなチャイムが万事屋に響いたのは、今日も今日とて身から出た貧困に喘ぐ三人が、 揃ってだらけていた時であった。
ここ数日全く仕事が無かったせいで、何かを通り越した様に元々無いやる気が更に低下してしまい チャイムに応える事すら億劫になっている二人を尻目に、 下っ端根性とこの状況を少しでも打破しようという気をを持った新八が、 はーい、とその来訪者を迎えようと引き戸を開けた。

物凄い勢いで閉めた。

パァンッ、と活きの良すぎる音に、だらけきっていた銀時と神楽はあ、と入り口の方を伺い見る。
其処には戸を背に庇う様にしてがたがた震えている新八の姿があった。
「なー、ななななななな、」
「何アルか新八。ナナコさんでも出たアルか」
面倒臭そうな声の神楽の問いをぶんぶんと首を千切れそうな勢いで振って否定し、 新八は必死に混乱する頭を鎮めようとした。
「イヤイヤイヤうん、見間違いだきっと。だらけてたせいで脳ミソまでだらけちゃったに違いない。 あの人がこんな処に居るワケ無いじゃないかうん。ナイナイナイナイナイ。 よーし見間違い決定、謝ってにこやかに応答。よし」
何ブツブツ言ってんだ、壊れたか、という銀時の声を無視し、すぅー、はぁー、と大きく深呼吸をすると、 新八は顔を引き締めて戸へ向き直り、
「す、すみません、ちょっと知ってる人と間違えちゃって…!」
言いながら再び引き戸を開けた。

物凄い勢いで閉め
「おっと」

がしぃ、と戸を押さえて身体を割り込ませ、再び締め出されるのを阻止したのは、 上背のある男だった。
両目を隠す様に覆うサングラス、シャカシャカと音を立てるヘッドフォン、 いかにも何かハジけてそうな黒尽くめの洋装と、それににつかわぬ背に負った三味線。

「「……………!!!!!」」

驚愕の中再び固まったのは新八、いち早く傘を構え臨戦体制に入ったのは神楽、 素早く立ち上がり、鋭い殺気と共にその来訪者を睨み付けたのは銀時。
「―――てめぇ、何で此処に居やがる」
低く問われた声に、来訪者は軽く肩を竦めた。
「そう警戒せずとも良いでござるよ。今日は仕事の依頼に来ただけでござる」
河上万斉は、平然とそう言った。


「ハ、依頼だぁ?殺しか、それともスパイか何かか?―――他当たれや、 こちとらそんなにヒマじゃねーんだよ」
敵意が無い事は認めたのか、しぶしぶながら一応客人としての対応で万斉は居間に通され、 粗茶を出された。 しかし依然、疑心暗鬼の目は向けられたまま、銀時から尖った言葉が吐かれる。
「先程垣間見えた時は大変ヒマそうに見えたが」
「うっせーな、とにかく鬼兵隊のヤツの依頼なんざ受けねえぞ。話すら聞きたくねーっての。 いっその事、見逃してやるからとっとと帰れ!」
取り付く島も無く言い放つ銀時に、しかし万斉は淡々と言った。
「今度の事は鬼兵隊とは関係ござらん。拙者個人としての依頼なのだが」
「知るかァアア!!てめっ、自分がこないだ俺等にした事覚えてますゥウウ!? 鬼兵隊としてだろーがお前個人としてだろーが、関わりたくなんざねーんだよ!かーえーれ!」
しっしっ、と手を振られ、万斉は軽く息を吐く。

「…そうか。残念でござる。折角お通殿に紹介して貰ったのだが… 無駄になってしまったでござるな。さて、如何したものか」

呟く様に漏らされた言葉に、否、正確には人物の名前に、 今の今まで恐縮していた少年が凄まじい勢いで反応した。

「―――――…オイ、ちょっと待て。何で、其処でお通ちゃんの名前が出てくるんだ」

ドスの効いた声で、ゆらりと万斉に向き直った少年の瞳は、完全に据わっている。 その様は彼の姉にとーっても良く似ていた。 新八キャラ変わってるアル、と神楽が銀時のすそに一歩隠れて呟いた。
万斉はふむ、と一度考えるそぶりを見せると、 おもむろに懐から一枚の紙を取り出し、三人へと差し出した。
「申し遅れた。拙者、こういう者でござる」
差し出された名刺を覗き込み、其処に書かれた文字列を見て、全員がぽかんと口を開けた。


「いいいいいいいいい!?つんぽぉおおぉおおお!!??」


叫んだのは新八である。

「つんぽって、えええぇえ!?つんぽって言ったら、 お通ちゃんを始めとした数々のヒットアイドルや芸能人を世に送り出してきた 敏腕プロデューサーじゃないですか!!」
「新八ィ、説明臭い口調は作者の力量がバレるアルよ。それに、 つんぽって言ったらきゃらきゃらしたアイドルだけじゃないネ! あのカトケンもコイツのプロデュースでいくつも曲出してるアル!」
途端、子供達が顔を輝かせる。いつの世も子供達は有名人にミーハーなモノだ。
更に万斉が証拠とばかりにお通からの紹介状を見せると、二人はますます沸き立った。
「ちょちょちょ、本物ですよ銀さん!本物のつんぽさんですよ!」
「だーぁから、知るかっての!大ッ体つんぽだがつくしだか何だか知んねーがなァ、 」
新八達はすっかり感動して興奮していたが、 未だ胡乱げな視線を崩していない銀時は、尚も冷たくあしらおうとした。
が。

「あ、あの、スイマセン、サイン下さい!」
「私もアル!」
「ああ、構わんでござるよ」

「ってオィイイイィイイイイ!!!!!完全につられてんじゃねぇえええぇええ!!!」





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…っていう感じで再登場してくれたら良いな!(笑顔)
依頼の内容までは考えてませんが(死ね)

でも実際、万斉は割と軽い感じであっさり出てきそうな気がします
そうでなくてどうやってつんぽ設定生かすってんだ
それにそうすればほら、高杉救済フラグも立つしさ!

神を信じて万斉再登場を祈願します

(07.07.15)

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