まぶたにふわり ※R





鼻先を首筋に埋めて、金色の獣がじゃれてくる。
ソファに沈められた身体は、無駄に重い体重をかけられて、動き難い事この上ない。
既に青色の軍服は肌蹴られ、インナーは器用にも彼の口で、胸の半ばまで開けられていた。
其処から掌と唇が侵入して、素肌に刺激を与えてくる。敏感な場所を生温い舌が伝って、反射的に身を竦めた。
気配で、彼が笑ったのが判った。
その金色の髪を掴んで、強めに引く。 そうそう仕事を妨害されては堪ったものではない。
退け、という意思表示の行動はしかし、彼の頭の位置を首から顔の前に移動させただけだった。
何か言う前に唇が塞がれる。 強引なくせに上手い事快楽を引き出す長いキス。
何時も流されない様必死になるのだが、生憎こういう体勢で強請られて勝てたためしは無かった。 しかも其れが即ち、先の行為を許す事に繋がるのが腹立たしい。
解放されてようやく焦点が合う距離まで離れた彼を、侮蔑を含ませて睨み付ける。
だが彼は全く堪える事無く、むしろ楽しそうに笑みを深めて、またこめかみに口付けて来た。
気が反れた隙に中心を握り込まれ、小さく悲鳴が零れた。
耳のすぐ側で、彼がくつりと低く咽喉を鳴らした。





懸命に声を抑え、震える身体を抑えようとする姿が堪らなく可愛らしい、と思う。
既に抵抗は意味が無いと諦めてはいるのだろう、しかし、薄く水膜の張った紅い瞳は、流されて堪るか、と語っている。
夜はもう少し素直なんだがなあ、と思いながら、 けれどもこうして意地を張る彼も心底可愛い、という結論に至る自分の思考に苦笑が滲んだ。

二十数年、カッコイイだとか綺麗だとか、つれない奴だとか実は優しい奴だとか、 一通り彼に対する印象が変化した後は、如何してか“可愛い”という形容詞が残って。
其処に時偶愛の言葉でも挟んでやると、彼は大抵そっぽを向いて眉を寄せる。
その様がまた可愛い。

顔中にキスを降らしながら彼自身を追い上げてやると、仕返しとばかりに剥き出しになっていた肩に爪を立てられた。
くたりと弛緩した身体を抱き締めて、続きは夜にな、と囁くと、鳩尾に拳が入った。











約束(一方的な宣言)通り、散々喘がせて、二人でシーツに沈み込む。
密着した、何時もは少し低い、今は火照った相手の身体を腕に包む。 殆ど意識が朦朧としている彼は、大人しく寄りかかって来る。蜜色の髪を梳いてやると、心地良さそうに首を竦めた。
彼は自身がスキンシップが嫌いだと思っているようだが、実際そうでもないだろうと思う。
優しく撫でてやれば甘えてくる、動物として当り前の反応をちゃんと返すのだから。
閉じられて見えない瞳に視線を合わせるようにして、おやすみ、とキスを落とした。





散々啼かされて、半分飛んでいる意識の中、広い腕に囲われたまま寝台に身体を預ける。
ぼうっとした頭で、彼の人の体温が近くに在る事に酷く安堵する。 そしてそう感じる自分に、戸惑いと、何かどうしようもない感情が湧く。
骨ばった指が頭を撫でてゆくのがくすぐったい。
うとうととした夢心地の中、彼が何か言ったような気がした。
内容は判らなかったが、ふわりと落とされたキスと、穏やかな声が心地良くて、其れを追うように、頬を摺り寄せた。

―――此れではどちらが(どうぶつ)か判らない―――

そう思いながら、睡魔に身を委ねた。










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御題 repla様 より